【短編小説】海辺の貝殻

短編小説

短編小説を書きました

こんにちは!
くじら草花店です🐋

今回のブログでは、自分の作品をテーマに短編小説をかいて見ました!

この小説を通して、くじら草花店の世界観や想いをさらに感じてもらえたら嬉しいなと思います!

本編

仕事場から家に帰り着き、これがいいんだよね〜、となんとなく惰性で缶ビールを飲む

少しのんびりして、寝る準備をしていく

目覚ましもいつも通りの時間になるから、特にセットはいらない

同じ日の繰り返し。

過ごしていくと言うより、過ぎていくと言うほうが合うだろう。

もやもやしたものに埋もれていく感覚に陥る。

鬱屈とした気分を晴らすように、寝る前にSNSを見て、美味しそうな食べ物や綺麗な観光地を見て、いつか行きたいと保存だけして、目を瞑る

暗い闇の中ざぁ、ざぁ、と耳の奥で穏やかな波の音が聴こえる

ざぁ、ざぁざぁ、だんだん音は鮮明になっていく

海の潮の香りが、緩やかな温く心地良い風とともに鼻へと入り込んでくる。

目を開けると、足は濡れていて、その足先は砂に少し沈んでいる。

足元の砂はチラチラと金色に輝いていた。手ですくって、よおく見ると、金色の鉱石が細かく小さく砕かれて、砂の中に混ざっていた。

手の上の砂を元の場所へ返し、遠くをみると、暗く吸い込まれそうな濃紺の海は、月に照らされて、らでんのようなオーロラ色に妖しく光っている。

どこかも分からない、誰もいない

ぼんやり立っていると
少しの不安な気持ちをかき消すように、波の音がざぁ、ざぁざぁ、と聴こえる

足を砂の中から持ち上げて、ゆっくりと、歩きはじめる当たりを見回すと、
砂浜の後ろにはゴツゴツとした竜の背中の様な岩が、点々と置かれ、
そしてその岩間には透明な浜昼顔がたおやかに、ゆらゆらと、夜風に揺れていた……

細く線の入った岩の亀裂は微かに光を返し、控えめに輝いていた。

おそらくこの岩が、長い年月を重ねて、細かく、小さく砕かれ、今の砂浜に混ざっているのだろう。 

変なところだと思いながらも、少し浜辺を歩いていると、貝殻がそこらに落ちていた。

波に濡れ、余計に眩しく光る浜辺に埋まっているその貝殻は、優しい白色をしていた。

手に取ってみると、貝殻の中にはキラキラと光る砂が入いり込んでいて、
傾けるとその砂は輝きながら、たらり、とこぼれ落ちて行った

優しく、柔らかな白の貝殻にキラキラと光る金色の砂は、余計に美しく見えた。

その美しさに見惚れて心はやんわりと解れていく

どこかも分からないし、ひとりだけど、今この瞬間には、なんだか温かさがあった

砂がこぼれ落ちた先の浜辺は、だんだんと明るいオレンジ色に光ってきた海の方へと目をやると、
黄金色の眩しい光が目を刺す。

思わず手の甲で目を隠す。

真上の夜空は塗り替えたように青白く変わっていた。

ざぁ、ざぁざぁ、

ざぁ、ざぁ…波の穏やかな音は、水の中に入ったかのようにだんだんと聴こえにくくなり、
遠くからは、聴き馴染みのある音が聴こえる波の音と入れ替わりに、その音はだんだんとはっきりと聴こえるようになってきた。

瞬きした時には、ベッドの上だった。

いつもの様にアラームを止めて、またいつもの今日が始まる。

その日の夜、缶ビールを飲みながら
今週末、海に行こうと、近くの海を検索していた。

日曜日のお昼過ぎ、友人と近くの海に来た。海から近い駅に着き、観光客でにぎわう中を浜辺へと向かって歩く

「たまにはいいもんだね!寒くて海には入れやしないけど」友人は、深く息を吸い込みながら、背伸びをして、悪い気はしていないような笑顔だった。

ただ、少しだけ、水着が着れるような時期に誘ってくれればよいのに、と言いたげな雰囲気なのが、申し訳ない気持ちもありながら、私には面白く感じた。

浜辺へ着くと、冷たい風がブワッと、強く吹いて来た。

潮風は、心をあの世界へと連れて行ってくれるような気がして、呼吸が深くなる。新鮮で、嬉しさに溢れる空気が身体中を巡る。

浜辺にはなんでもない白い貝殻がそこらじゅうに落ちている。

気にも留めず、人はその上を歩く。

私はその貝殻を拾い上げ、微笑む。

「それ、珍しいの?」
友人は訝しげな顔で私を見る。

「ううん!だけど、これがいいのよ」
なんでもない貝殻を大事に鞄へしまった。

体温が上がった気がした。

おわりに

最後まで読んでくださり、ありがとうございます🐋

皆さんにも、自分だけの宝物はありますでしょうか?

小さい頃は、道で拾った草花や小石、ぴかぴかに磨いた泥団子が、自分だけの宝物だったなぁ、と書きながら思い出しました。

皆さんの宝物も、もしよければ、こっそり教えてくださいね😊

それでは、また次回お会いしましょう〜

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